<Presented by NATSUKI>

癒される瞬間








クラウドは気になっていた。

ここ何日かティファの様子がおかしい。

それは夜、二人きりになったときに限ってだった。

もっと言えば、洗い物を終えて、カウンターに二人で並んで座りほっと一息つく時にそれは顕著に見られる。

具体的に挙げると、まず、急にそわそわと落ち着かない様子を見せる。

時々クラウドをじっと、というより ぼうっと見つめている。

言いかけた言葉を飲み込み、頬をほんのり染めて俯く。

などである。

ティファが何を言いたいのか、何をしたいのか、はっきり予測はつかないが、多分悪い事ではない、とクラウドは思う。

何かお願いがあるとか…頼み事があるとか(同じだ)そんなところだろう。

…つまりそれしか思いつかない。



いつものように洗い物をしているカウンター内のティファを クラウドは頬杖をついて眺める。

思えば彼女がクラウドにする頼み事と言えば、日常の小さなこと―仕事帰りにあれを買ってきてとか、遅くなる時は必ず電話してとか

たあいも無い事ばかりで、別に何日も言いづらそうにするような内容ではない。

じゃあ一体何をお願いしたいのか?

言いづらい頼み事…そわそわ落ち着かない…ぼうっと見つめる…染まる頬…

「………」

クラウドは思わず嬉しい想像をしてしまった。

その邪推が正しいとすれば、ティファはどんな言葉で切り出すつもりだろう。

頬を染めて俯いて、蚊の泣くような声で…

(クラウド、あの、今夜…いい?)

何だ?

(何だって…だから…)

はっきり言わないとわからないな。

(もう、わかるでしょ?意地悪…)

全然わからない。ほら、言って。

(…んもう。だから、今夜…

書いてる作者が恥ずかしいのでこの辺で止めておく。



妄想にふけり緩みきった口元を引き締めなおすと、クラウドはティファに声を掛けた。

「手伝おうか?」

早く終わらせて、こっちに来てくれ、と言う深い意味が込められているがティファに分かる筈もない。

「ううん、今終わるところだから。ありがとう」

ティファの笑顔につられてクラウドも微笑む。

自分の飲んでいる少しキツめの酒が注がれたグラスをちょっと掲げて見せて言った。

「ティファもつきあうだろ?」

「うん。じゃあ、少しだけ」

クラウドはカウンターの上にティファが差し出したグラスに氷を落として、ウィスキーボトルの蓋を開けて注いだ。

少しだけ、と言われたが、心持ち多めに注ぐ。

多少酔ったほうが、ティファもお願いを口にしやすいだろう。

「よし、と。終わった!」

ティファが最後のグラスを棚に仕舞ってカウンターを出ると、ようやくスツールに落ち着いた。

お疲れ様、と言い合ってグラスをかちんと合わせて微笑みあう。

お互い一口酒を舐めたあと、ティファが俯いて「あの…」と言いかけモジモジした。

よし、来た。 早いな、ティファ。

「ん?」

「…ええと、今日は、忙しかったなーって…」

「………」

言いづらいのはわかる。

仕事に余裕があり帰宅が早かったここ数日――昨日も一昨日も、その前も……だったよな。

でも俺は一向に構わないんだ。

今日も仕事はきつくなかったし、いや多少きつくたって、体力に自信はある。

それに、そんなお願いをするティファに呆れたりなんかもしない。

「ティファ…」

「え?」

顔を上げたティファの頬が少し染まっているのは、一口舐めた酒のせいではあるまい。

「何か言いたいことがあるんだろ?」

「え…」

「ずっと、何か言いたそうだと思ってたんだ」

「…わかる?」

「ああ、だいたいは」

ティファはまた恥ずかしそうに俯いた。

室内の抑えた灯りの中でも、今度ははっきり頬が赤く染まっているのが見て取れる。

「たまには、いいと思うんだ…その…ティファから…」

ティファの赤面がクラウドにも伝染する。

まずい、こっちも恥ずかしくなってきた。

「たまにじゃなくて…出来れば毎日がいいんだけど…」

「ああ…ま、毎日…?」

…いや、ティファが望むなら、俺は頑張れる。と思う。

「じゃあ、お願い」

ティファはスツールから降りると、クラウドの前に立って、彼に向かって両手を差し伸べた。

今?ここで?

さすがのクラウドも面食らった。もしかして自分は何か勘違いをしているのかも、とようやく冷静になる。

だが身体は反射的反応を示し、スツールから降りるとティファと向き合ってその手を取った。

ティファがふわりとクラウドの肩に頬を乗せ、身を預けた。

「…ぎゅっとして」

「……え?」

「毎日片付けを終えたら、クラウドが『お疲れ様』って言ってくれるでしょ?その時に、こうして欲しいなーなんてずっと思ってたの。

一日の疲れが吹き飛んで、ほっと落ち着くから…」

やだもう、恥ずかしい、と呟きながら、ティファはクラウドの腕の中で僅かに身じろぎする。

「………」

クラウドはとりあえず回した腕に少し力を込めた。

「…もっと」

言われるままに力を強めると、ティファが満足したようにほう、と溜息を零した。

しばしそのままで 甘い時間が流れる。

「…ありがと。癒されちゃった。も、いいよ」

だがクラウドの腕の力は緩まない。

「クラウド?」

顔を見ようと首を動かしたが、クラウドもティファの肩口に顔を埋めたまま、答えない。



クラウドはちょっと感動していた。

先走った自分の想像には呆れたが

ぎゅっと抱きしめられるだけで疲れが吹き飛ぶ、癒される、と言われた日には

物凄い勢いで心の底から嬉しいやら愛しいやら、気持ちが溢れてしまった。

「ねえ、何か言って」

動かないクラウドから身を離すのを諦めて、ティファは再びその肩に頭を乗せた。

クラウドはやっと答える。

「……もっと」

ティファは目をぱちぱちと瞬いて、それから微笑んだ。

うん、いいよ、と耳元に囁いて、クラウドの背中に回した腕に、ぎゅっと力を込める。

お返しに、更にぎゅうっと抱きしめられる。



終いには 力比べのように ぎゅうぎゅうとお互い抱きしめあって

可笑しくなって二人でくすくす笑い出した。

「クラウド、苦しいよ」

「ああ、でも確かに癒される…」





この日から「お疲れ様」のハグが、二人の新たな習慣になった。







FIN



うへへへへ(怪しい)
気がついたら夏生さん(TRIP×TRIP)とプチコラボ♪
ムリを言って小説を強奪vvうはー☆
キリ番踏んでもらってイラスト描かせてもらった上に美味しい思いをさせていただきました(〃▽〃)

ホントにいいの!?とかいいつつもうあぷしちゃったーわーい♪
夏生さんちのキリ番なかなか踏めなくて(TT)
いつになったらお宝置き場に「夏生さん」とお名前を載せる事が出来るのか途方に暮れておりましたのです。
それがなんと!
神様は見捨ててばかりじゃないんですね!!うふふふふ。幸せ…v

神様夏生様!ありがとうございました〜v毎日拝みますvv


でもキリ番の神様は何処…(ゴフ)


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