ぬくもり
                     文/夏生(TRIP×TRIP
                     絵/ 柊(携帯用の絵はこちらv)






ふかふかのソファに身を沈めて 規則正しい寝息を立てている人。

私の、大好きな ひと。



気持ち良さそうな寝顔を傍らで見つめる。

それはとても 安らかで 穏やかで。

そして、綺麗で。



陽に透ける金色の髪に手を伸ばして――起こさないようにそっと――

指で梳けばすり抜ける あまりにも儚いその感触が 不意に胸を締め付ける。

もっと、確かな温もりを。

大好きな人のそばにいるのだという確かな、証を。



胸の上で組んだ、逞しい腕。

いつも私を包んでくれる、温かい手。

その指先にそっと触れてみれば 伝わるのは少しひやりとした熱。



ねえ、温もりが 欲しいの。



ああ、どうしてあなたは

こんな風に私を独りにするの?

どうして私を こんなに切なくさせるの?



いつもいつも心の奥には拭えない恐怖があって。

私はまた 間違っていない?

あなたの縋る手に目を背けた時みたいに。

あなたに過去の傷を思い起こさせるような仕事を勧めた時みたいに。

あなたの心と身体を蝕むものに 気付かなかった時みたいに。

幸せだと思い込もうとしていた あの頃みたいに。

ねえ、クラウド、あなたは今 私と居て



――幸せですか





「…どうしてそんな顔してる?」



不思議な光彩を湛える彼の瞳に 私の歪んだ顔が映る。

心配そうに寄せられた眉の下の 澄んだ泉のような青の中に

愚かでちっぽけな私を永遠に閉じ込めて欲しい。

深い深い青の底でまどろんでいられるなら

私はこんな不安を感じなくて済むかもしれないのに。



「…クラウド、なかなか起きないから」

彼はちょっと笑って、身体を起こす。

馬鹿みたいだって、自分でも分かってる、だけど―

「退屈だったか?」



そう、寂しくて――自分もあなたも 見失うほどに。



クラウドの腕が伸びて 私の腰を攫う。

「もう、うたた寝しない」

「……っ、馬鹿ね、いいのよ。うたた寝ぐらい」

「もう、しない。これからずっと」

私の首筋に一つ口付けて、零れた彼の言葉に

「ティファを独りにしたりしない」



涙が溢れそうになる。



彼の首に腕を回せば

背中に添えられた彼の手が 私をもっと引き寄せる。

私は目を閉じて あなたをもっと感じる。



「独りにすると、余計な事考えるんだろ?ティファは」



見透かされて 恥ずかしくて

でも嬉しくて。

欲しかった温もりは 「余計な事」 を あっという間に掻き消してくれた。



――単純な 私。



「今日は甘えん坊だな、ティファ」



本当は いつだってそうよ。



「悪くないでしょ?」



「大歓迎だ」







そう言って彼は 唇にとっておきの温もりをくれた。













FIN




にょ、にょほほーん♪(何)
TRIP×TRIPの夏生さんとまたこっそりコラボしちゃいましたーvv至・福!
1周年のお祝い何がいい?なんてぽろりと言っちゃったがウンの尽きよなっきーv
貰うわっしかも「この絵にお話書いてー!」とイラスト送りつける始末です。
読みました?あ、読んだからここ見てるんですよねっ(≧▽≦)
もうこのクラウドの優しさったら…ぐはぁっ!!!
ちょっとしたうたた寝なのに独り取り残された気分になって寂しくなっちゃって…
ティファ、
可愛すぎだからっこの仔うさぎちゃん!!
いいなぁ…クラウド←出た本音。

今回ゴツっとキたのはクラウドの「少しひやりとした熱」を持つ手。
その内側に秘める温かさを知ってるから尚、求めてしまうぬくもり。
わーー!!…イイ…!!(きゅーン)

独りになると押し寄せる不安とか葛藤、凍えそうな心を一瞬で融解するハグ。
そしてとっておきの…ぬ、ぬくも…ゴフ(何か違う事考えてますよ誰か殴って止めて)
いいじゃないソファープレ…(殴ってもムリ)

身も心も暖め合える、そんな二人が素敵だ!

夏生さん、ありがとうございました!!一生の宝物にしますvv



触発されておまけを書いてしまいました(゜∀゜)
この読後感を壊されたくない方はこのままお戻り下さい
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                              文/柊





ちょっと横になるだけのつもりだったんだ。

気が付けば部屋は窓から差し込む一日の終わりを告げる夕日の色に染まっていて。

懐かしささえ覚える慣れた甘い香りに目を上げれば

少し俯いた彼女が傍らに佇んでいた。

何も映していないかのようなその瞳に細い針で胸を突かれる。


何を考えていた?ティファ。


そう、それはきっと今の俺たちには「余計な事」

君にそうさせてしまっているのは、 俺。


「気丈」という鎧を纏った彼女の内に秘める弱さ。

その硝子がどんなに脆く危ういか 俺は知っている。

独りで居る時のティファはいつもこうなのだろうか。

人知れず その膝を抱えて 痛みに耐えているのだろうか。


いつだって、抱きしめていたい。


それでその細い肩の小さな震えが止まるのなら。

そう思うのは愚かな傲慢だろうか。

それでもどうにもならないとはいえ、彼女との距離をあけてしまう毎日の仕事やちょっとした睡魔にすら憤りを覚える。

だから

少し大袈裟かもしれないような言葉を紡ぐ。

頬をぱっと染め、慌てて恐縮する彼女もまた犯罪的なほど可愛いから。

抱き寄せるしなやかな身体が折れそうなほど心許ないから。

大切に

想いをこめて

取り込んだ。


ひとつになってしまえたらいいのにな


口付けた唇が触れ合う距離で呟いた。

寂しさも 苦しみも 

完全に埋める事の出来ない隙間に沸き起こる感情がやたらと切なくて腹立たしく思う


「そうしたら…こうやって抱きしめてもらえなくなっちゃう」


くすくすと笑いながらそう言ったティファはすぐに耳まで充血させて俯いた。

いつもながら…凶悪だ。

「わ…や、ちょ…っ」

腕に力を込めて彼女の身体を引き上げ、ソファーの上にもつれ込んだ。

「…足りないだろ?」

体の上でその身の置き場に狼狽えるティファの充分だ、という言葉を無理矢理塞いでから

足りないのは自分の方なのだと思い知らされる。

逃げ出そうとする身体を捕らえ、細い首元を押さえつけて

酸素を求める吐息が甘く喘ぎ、彼女が自ら応えはじめるまで貪った。


そうだな

こんなにも愛おしいと思える気持ちを

与え合うぬくもりを

ひとつにしてしまうなんて それこそ愚かな事


だから

もっと

求めて 求め合って


「ティファ…」

欲しい想いをそのまま乗せて呼ぶから

その甘えたな唇でとろけるように

俺を呼んでくれ



「…ご」


ご…?


「ごはんよ、クラウド」


はい?


突拍子もない不意打ちの言葉に思わず拘束の手が緩んだ隙を狙って

ティファはするりとソファーから降りた。

「…って呼びに来たのに」

どうしてこうなっちゃったのかしら、と乱れた長い髪をはらりと手で梳いて

呆けている俺を尻目にいつもより早足で部屋の戸口まで歩き

「デンゼルとマリンも待ってるから…」

ちらりと振り返ったその頬は赤いまま。


「…また、後でね」



俺はといえば

閉まった扉をぼんやりと見つめつつ

追い討ちをかけられたあきらめの悪い身体を少々持て余しながら

未だ残る彼女のぬくもりを抱きしめるように

膝を抱えて大きな溜め息をつくしかなかった。






FIN








放置放置ー!(ぶへ)

この続きは夏生さん宅の地下にて(嘘です)

1周年という名を借りて楽しんでしまいました!




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