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<SS A nursing song>





ああ、願わくば


全てのものに安らぎと



優しい眠りを







A nursing song









少年は寝室の窓の隙間から差し込む柔らかな月光にその瞳を開いた。



むくりと起き上がった動作は常のものであったがその思考は疎い。



ただ



己の顔をゆるく照らす月明かりを



ただ



座り込んだまま



じっとそのうつろな瞳に反らせていた。







少年は泣いている



瞳は乾いたまま



音を紡ぐ唇は結ばれたまま



少年は泣いている



優しすぎる月光は何をするでもなく



ただ



悲しみを表さない



悲しみに満ち過ぎた少年の無垢なその顔を



眠れ



眠れと



照らし続ける









女は十字架をその背に負う



重みに耐え



流れ続ける血を止める術も無いまま



少年をそのかいなに抱く



血塗られた震える腕は



少年を



己の胎内に取り込もうとするかのように






為すがままの少年は



その朱い腕の中で小さく息を吐き



体をまるめて閑かに瞳を閉じる。



吾子のように



胎児のように








眠れ



眠れ



眠れ








音も無く



闇を照らす月の光を見つめ続ける紅い瞳は




乾いている






泣いている







FIN


声を上げて泣いてくれた方がまだマシ。

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