<SS In quiet sound of rain2>



雨の音が、聞こえる


激しい音ではない


静かな、雨音



「クラウド」


柔らかな掌が頬を包む


同時に優しいにおいが締め付けられた胸をゆっくりと解いてゆく


「ティファ…」


「ひどい汗…また夢を見たの…?」


微かに悲しげな色をのせた鳶色の瞳が暗闇の中で見開いた視界にはっきりと映る。


「ティ……っ」


思わずその白い肩に縋り付いていた。


「クラウド…」


突然力いっぱいしがみつかれたティファは少し驚いたようだが、すぐにそのしなやかな腕で返してくれる。

当然、支えを失った二つの身体は元居たシーツの上へと折り重なる。

寝台をきしませたその音はリアルを彷彿とさせ、ひどく安堵させてくれた。

そのまま、降り止まない静かな雨音を聞いている。

泣いてしまいそうなほど、暖かい腕の中で。



「ねえ、クラウド」

しばしの沈黙の後、じっと窓の外を見つめていたティファが唇を開いた。

「怒らないで、…聞いてね?」

彼女の肩口に埋めた顔を心持ち上げると、その両手が自分の頬を挟み、赤い瞳が少し困ったように微笑んだ。

自分は今ものすごく情けない顔をしていると思ったが、どうでもよかった。

彼女の聞き慣れた声がやけに懐かしく、その言葉一つ一つが体中に浸透していく。


「私は…雨、嫌いじゃないわ」


柔らかな唇が額に押しあてられる。


「どちらかというと…好きなの」


ごめんね、と左目に唇の感触。


「憶えてる?…あの時も、雨が降ってたの」


あなたに、再会した…あの日、と右目に唇。


「あの日私は…酔いつぶれたお客さんを駅まで送りに行ったの。その帰りに、」


されるがままに、顔の角度を変えるティファの小さな唇を目で追う。

それは僅かにためらった後、柔らかく自分の唇へと降りてきた。



「あなたを、見つけた」



彼女の瑞々しい唇は、乾ききった咽を潤し、すぐに離れる。



「あの時、雨が降っていなかったら…きっと、逢えなかった」



あなたに。


「…ティファ」


「あの日の暖かい雨を…私は忘れない。…ずっと」


どうして君はこんなにも俺が安らぐ方法を知っているのだろう


まるで魔法のような言霊は心の奥の開ききった傷跡を包むように癒していく。

彼女のしなやかな肢体をもう一度強く抱きしめた。

痛みはなんのためらいも無く溢れるような熱い想いへとすりかわる。


「…ありがとう、ティファ」


力を取り戻した腕の中でティファは安らかな息を洩らし、その両腕を肩へとまわしてきた。

すかさず体勢を反転させ、その身体を自分の下へと組み敷く。


「クラウド…」


理屈ではないのだ。全身が、細胞が、彼女を欲している。


きっともう、彼女無しでは俺は生きていけない。

君の居ないこれからなど、何の意味も持たない。

本気で、そう思うんだ。


あの出会いを奇跡だというのなら、それを与えた雨にすら感謝したい。


そう、思う。



見下ろした闇に浮かび上がるような白い肌には先刻激しく過ぎていった波の痕跡がいくつも残る。

ちらりと覗く罪悪感はこの際無視することにした。

「ごめん。…止まりそうに無いんだ」

両頬を紅く染め上げた彼女が小さく頷くのを合図にこの上なく甘美で柔らかなその肌へと没頭する。




つい先程とはかなり様相を変え、やけに優しく耳に届く




静かな、雨音を聞きながら







FIN







3000HITキリリクSS&イラです。隊長殿に捧げます。
リク内容は要約すると「クラウドを虐めて、結局ラブラブ」というものでした。詳しくは日記にて言い訳したいと思います><

また雨モノにしてしまいました。
クラウドとティファが駅で再会する所って、インターナショナル版で詳しく取り上げられているんですよね。
やってないから判らないんですけど、まあ、いいや。(笑)
そしてまたクラウドがオイシイ。。。はあ。。。

隊長、末永く可愛がってやってくださいね!遅くなって申し訳ありませんでした!!(逃走)

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