<SS Touch!>



柔らかくて

ふわふわ


出来る事なら一日中さわっていたい






Touch!







つん。


「なあに?ティファ」

「ん?」

卓席で宿題を広げていたマリンは隣の席で頬杖をつきながらにこにこと自分の頬を突付いたティファを見遣った。

「だって気持ちいいんだもん、マリンのほっぺ」

両手でその小さな頬を挟むとティファは んー、と幸せそうに口元を緩めた。

されるがままのマリンもこれじゃ勉強できないよー、と言いつつも嬉しそうにうふふ、と笑顔を見せる。

子供の頬とはなんと感触の良いものか。

ふとマリンの向かいでやはり宿題に手を付けているデンゼルのすべすべとした頬にも食指を動かしたティファは息子のそれに

じっと魅入った。

おかしな視線を感じ、矛先が自分に向けられた事に気付いたデンゼルは え、と少しうろたえる。

「デンゼルも…触り甲斐がありそうね…」

ティファの赤味がかった瞳がきらりと閃く。

「お…俺、勉強ちゅ…わーっ!!」

いつに間にか隣の席に移動して両手を伸ばしてきたにんまりと笑むティファから逃れようと身を捩り、

腕を突っ張るがリーチの差がありすぎた。

難なく息子の両頬を手中に収めたティファは うー、と未だ抵抗するデンゼルを意にも介さずその感触に耽る。

「もう、一日中触ってたい…」

「ちょ、も、もう離し…」

「いいじゃない触るくらい〜」

減るわけでもないわ、と既に目を閉じてうっとりとしているティファになにやら真っ赤になって藻掻くデンゼルを見つめていたマリンは

ぷぷ、と吹き出した。

「…ティファってふわふわした物とか好きよね。マシュマロなんて持たせたら一日中手に持ってるもの。ね、クラウド」

隣の卓席でコーヒーに口をつけながら黙ってその光景を静観していたクラウドは そうだな、と呟いた。

「俺はマシュマロなんかじゃ…クラウド!見てないで助けて…!」

ほっぺたを挟まれたまま首を捻ってクラウドを仰いだデンゼルは何とも情けない声で助けを求める。

しかし、ことりとカップを卓上に置いたクラウドは無情にも いや、と続けた。

「ティファの言ってる事は正論だ」

落ち着き払ったそのスタンスにどうやら彼も自分の味方ではないらしい事を悟ったデンゼルは落胆した。

マシュマロはマシュマロらしく大人しくなるしかないのであろうか。

「手に心地良いものは触っていて飽きない。確かにその通りだ」

だが、とクラウドは腕を組んだ。

「…ティファがその良さを知っているとは驚いたな」

懸命にマシュマロの気持ちを推し量っていたデンゼルはティファの掌からふっと力が抜けるのを感じた。

今だ、とばかりにその甘すぎる拘束から逃れることに成功する。

追っ手を警戒して受身を取り目を瞑ったがその気配は感じられず、そっと目を開いて目の前のティファを見上げた。

「……」

ティファの動きはその体勢のまま停止していた。自分を見ている筈のその瞳には何も映していないかのように見える。

「ふわふわしていて」

クラウドが続けた。

「柔らかくて」

ティファの頬がどんどん朱に染まっていく。

怪訝に思ったデンゼルはクラウドをも仰いだが、それも気にせずまだまだ続ける。

「一日中触っていたい」

「く、クラウ…」

やっとティファが何だか狼狽したように言葉を発した。

「どうして嫌がるのか俺にはわからない」

「…ティファ、触らせてくれないの?」

僅かに眉を顰めたマリンの言葉に ええ?!とデンゼルの視線がティファへと注がれる。

「や、…あの、ち、違うの!…クラウドは、」

そこで言葉を切ったティファは真っ赤に染まりあがった頬のまま、不貞不貞しくも表情ひとつ変えず自分を見据えているクラウドを睨み付けた。

「何が違うんだよ、何かずるいぞティファー!」

何だか解からないが、どうやら矛先の方向が変わったことに大いに安堵したデンゼルがそこから素早く逃げ出して何やら硬直したまま

動かないティファの後ろに回り込み、ここぞとばかりに抗議の声をあげた。

「うん…それはティファが良くないと思う」

マリンまでもが クラウド可哀想、などと呟いている。

「う…だから違うんだってば!クラウドが言ってるのは…その…」

「マリン」

やはりそこで口篭るティファを図々しく見ていたクラウドがマリンにおいで、と手招きする。

なあに?と側に来たマリンのほっぺたに両手で触れ、問うた。

「…嫌か?」

「ううん、嫌じゃないよ?」

にっこりと笑ったマリンは続けた。

「凄く気持ちいい」

びくっと身を強張らせたティファは何故か両脇を引き締め自分の胸を覆うように己を抱く。

「だってわたし、クラウドもティファも大好きだもん。触ってもらえると嬉しいよ?デンゼルだって、ホントは嬉しいんだと思う」

デンゼルがうぐ、と詰まった。(ティファも詰まった)

「そ、それは…そう、だけど…」

微かに頬を染めて俯いたデンゼルがぼそぼそと呟く。

「だよな」

マリンと微笑み合ったクラウドはそわそわと落ち着きの無いティファをちらりと見遣った。

「ず…ずるいわクラウド」

悔し紛れの言葉は天使の笑顔を貶める。

「ティファ…」

どうして?と少し寂しそうに小首を傾げるマリンの後ろでクラウドがうんうんと頷いている。

「も、もう!知らない!!」

どうにもいたたまれなくなったティファは踵を返すと階段を駆け上がってしまった。

「あ、逃げた」

デンゼルがずるい、と呟いた。

「…しょうがないな」

全く、とひとつ溜め息を吐いたクラウドはマリンの頭を撫でると腰を上げる。

「…決着つけてくる」

宿題ちゃんとやるんだぞ、と振り返りながら言うクラウドの表情はよく見えなかったがその声は何だか楽しそうだ。

マリンはゆっくりと階段を上がっていくクラウドの背中に 頑張って!、と無邪気な声援を送った。





「ほっぺくらい触らせてあげればいいのにね」

ノートに鉛筆を走らせながらマリンが呟く。

「なんかさ、…恥ずかしいんだよ」

教科書を閉じたデンゼルがはあ、と息を吐くと 照れちゃって、とマリンが笑う。

うるさいな、と頬を染め唇を尖らせたデンゼルはふと天井を見上げた。

いっときどたばたと騒がしかった二階が急に静かになったからである。

「…決着ついたみたいだな」

「そうみたい」

顔を見合わせた二人はぷぷ、と吹き出した。

「なあ、この後空き地でサッカーの練習するんだ。マリンも来るだろ?」

「うん、行く!」





助けてデンゼル、マリン。





FIN



クラウドはアビリティ「おうえん」を覚えた(ぇ

…えー。。。
勿論、クラウドが言ってるのはアレです。はい。
え?わからない…?
やだなぁ、いいんですよvソレです。そ・れ。

真っ直ぐに成長するんだよ、デンマリ。


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