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<SS Gentle blue>
おめでとう
代わるがわる贈られる留守電メッセージについつい口端に笑みがもれる
携帯を耳に押し当てながら顔を上げれば
目の前に広がる、果てしない 蒼
Gentle blue
『出張…?』
5日前の朝、彼女が見せたためらいにも似た表情を、今なら理解できる。
季節は夏へと移り、子供たちは毎日元気良く遊びに出掛ける夏休み。
クラウドの仕事柄、多忙を極める時期でもある。
大陸を渡る依頼品がある程度溜まったからという自分の言葉に見せたティファの躊躇いを、家を空ける仕事が入った時の
いつもの彼女のそれだと思ってしまったのは忙しさからか、自分に無頓着なこの性格からか。
今朝、拠点としている宿へ自分宛に届いた小包。
家からのそれに何事かと開けてみて、思わず天井を仰いでしまった。
「誕生日おめでとう」と書かれた自分の似顔絵といくつかの折り紙。
真っ白な細いリボンで綺麗にラッピングされた小さな菓子は、彼女が自分のために焼いたであろうブランデーケーキだ。
昨夜までに交わされた電話での会話にそんな内容が一言も出されなかったのは単に驚かせたかった、という意図が容易に伺える。
クラウドは浜辺に停めた単車に寄り掛かると、持ってきた菓子を一口放り込み、広げた画用紙の中の黄色く塗られたツンツン頭を見詰めた。
以前描いて貰ったそれよりも少し上達した、と思うのは「親の欲目」というやつだろうか。
クレヨンで書かれた『早く帰って来てね』と言う文字がやけに胸に響いた。
「誕生日、か…」
クラウドはひとつ息をつくと目の前に広がる海を見遣る。
遊泳場から少し離れたその場所はリゾート地とは思えないほど静まり返り、寄せる波と時折強く吹く潮風だけが音を奏でた。
去年の今頃もこうやって大陸を走っていた筈だ。
あの頃はこんな風に顔を上げることはしなかった気がする。
「前」を向いていれば、この景色が広がっていたのだろうか。
同封されていたティファからの手紙。
綺麗に折りたたまれた真っ白な便箋を手に取る。
ふと先程フェンリルのハンドルに提げた携帯が着信を告げた。
「あ、繋がった!デンゼル、早く早く!!…クラウド?聞いててね」
マリンが電話を持ち替える気配と、せーの、という言葉が少し遠くから聞こえ、直後に
「「お誕生日おめでとーー!!」」
咄嗟に耳から離していた携帯。それでも響き渡る子供たちの声に思わず苦笑した。
「…ありがとう。でもさっき留守電で聞いたぞ、それ」
「ちゃんとクラウドに言いたかったの!全然電話出ないんだもん」
不満気なマリンの声はその表情まで容易に想像できてくく、と喉が鳴る。
「悪かった。急いで仕事片付けようと思って頑張ってたんだ。早く帰りたいからな」
それなら許してあげる、という言葉と共にデンゼルが取って代わった。
「クラウド、荷物もう届いただろ?見た?折り紙、赤いヤツ俺が折ったんだ」
奥で非難の声が聞こえる中意気揚々と捲くし立てる。
「ああ、なかなか上手く出来てたな。あれはバハムートか?」
「…鶴だよ」
「……そうか」
耳を欹てていたのかマリンの噴き出す声が響き、うるさいな!と舌打ちするデンゼルにまたもや悪かったと呟いた。
「ちぇっ…もういいよ。その代わりお土産期待してるから」
「わかった。奮発する」
どうしてお誕生日の人におねだりするの?!と受話器を掻っ攫ったマリンが
「ティファね、今まで居たんだけどついさっきお買い物に出ちゃったの」
ごめんね、と呟く。
「ああ、構わない。また後で電話するよ。…なあ、マリン」
「なあに?」
「誕生日の俺が…誰かに贈り物をするのは、やっぱりおかしいか?」
「…?デンゼルのお土産の事?それともティファに?」
「…どっちもだ」
見透かされている気がしてつい空いている手で頭を掻く。マリンはうーん、と少し考えてから言った。
「クラウドは、ティファが喜ぶと嬉しいよね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあいいと思う。それもクラウドのお誕生日プレゼントに決定!」
ティファには内緒にしておくね、と悪戯っぽく小声で囁く娘にふっと笑みが漏れる。
それから、と付け足した。
「もちろんマリンやデンゼルが喜ぶのも嬉しいから、それもプレゼントに決定しておいてくれ」
「…了解!」
うふふ、と子供らしい笑い声が耳にくすぐったかった。
空の蒼に溶ける水平線はどこまでも果てしなく続く。
まるで、俺達みたいだ
何の繋がりも無いそれぞれがこんなにも近く思える。
『ずっと ここで待ってるから』
何度も読み返した彼女の整った丁寧な文字は手紙を開かずとも目に焼き付いて離れない。
手にした便箋を「それ」と一緒にポケットに押し込んだ。
ティファの誕生日に渡そうと思ってずっと以前から購入していた物。
あの時は、自分の帰りを待ちくたびれて眠ってしまった彼女の寝顔につい…
そこまで考えてクラウドは苦笑を噛み殺す。
「タイミング、か…」
難しいよな、とひとりごちてゴーグルを着けた。
ゴーグル越しに映る空と海の狭間。
その距離をもう少しだけこの手で近付けてみよう。
溶け合う蒼はきっと
より深く、優しい色になる
FIN
お誕生日おめでとうクラウド☆
ティファが居なくて淋しいね!(ひひ)
明日には帰れるようにヘイスガ発動。
渡すモンはさっさと渡したらいいと思う。
いつまで持っとるんじゃクラウド…(誰がそうした)
まあ、今度こそ。ね。
渡せるかな…。
疑問で不安。