<SS 50000HIT Fetishism>






からん、と静まり返った店内に扉に取り付けてあるベルがいつもより大きく響いた。

ただいまと言いかけて中の様子を伺う。

いつもなら当たり前のようにある筈の笑顔、温かい気配を探る自分が可笑しくてひとつ息を吐いた。

早く彼女をこの目に焼き付けたい。

体中の細胞が、それを欲している。






Fetishism






装備を外しながら住居である二階へと階段を上がりかけ、慣れた甘いシャンプーの香りが漂ってくる事に気付く。

耳を澄ませば微かに聞こえてくる水音。

クラウドは手にした装備品を部屋に放り込むと、クローゼットの引き出しからバスタオルを引っ張り出して口元を緩めた。

もう既に寝静まっているであろう子供たちの部屋の前を過ると短い階段を音も立てずに降りる。



「…わ、クラウド帰ってたの?」

びっくりした、と目を丸くするティファのパジャマの襟元から覗く湯上りの肌はほのかに色付いて艶かしくすらある。

「ただいま」

「…おかえ、り」

脱衣所の扉のノブを手放せずにいるティファは壁に寄り掛かったまま両手にタオルを広げて微笑むクラウドを訝しげに見つめると

少しして上気した頬を更に火照らせた。


俺がここに待機している意味を悟ったようだ。




「あの…クラウド?」

僅かに躊躇するティファを壊れ物を扱うように優しく部屋の寝台に座らせる。

戸惑い気味に、しかしおとなしく従う彼女はそのあからさまな気遣いにやんわりとした強制力を感じているのだろう。

「ん?」

問いかけには特に気も留めない口調で返す。彼女を頭から覆う様に被せていたバスタオルをそっとはずした。

言いたいことはわかっている。またいつものように同じ言葉を呟くつもりなんだ。

「私、…その、自分で出来るから…」

「うん」

俺は即答。しかしそれはいい加減なもので、生返事と言ってもいい。

たどたどしいティファの言葉は鼓膜を震わせているがその奥までは入ってこない。

既に俺の意識は目の前にある彼女の濡れた黒髪に捕らわれているのだから。

「ティファ」

促すように呼べば諦めたように小さく息を吐いたティファが腕を伸ばしてその髪をまとめ上げている髪留めを外す。

水分を含んでいる所為でいつもとは違う艶やかさを纏った長い髪がぱらりと解け、流れ落ちた。

この瞬間が何とも言えない。

むずむずと口元を緩めながら手にした厚手のタオルで丁寧にその水分を取っていく。

梳けばその指の隙間からさらりと逃げ出すような普段の柔らかい感触もいいけどな。

湿りで摩擦を起こした指に髪を引かれて僅かにくん、とあがるティファの細いあごのラインを盗み見るのもたまらなくアレだ。

それが見たくて何度もその行為を繰り返していることにはまだ気付かれていない。


「っ…」

まるで偶然のように彼女の耳の後ろに指を滑らせればぴくりと反応して、でもそれを取り繕おうとするポーカーフェイスの頬が赤い。

高揚する想いを押さえつける。まだだ。


「や、」

万遍なくあてたドライヤーで軽さを取り戻した髪を満足げにすくい上げてそのうなじに軽く唇を押し当てると慌てるティファの白い指が

首筋を防衛するように覆った。

もう、と振り返る彼女の一種犯罪的な上目遣いと目線を絡ませる前に、それに気付いてしまった。

目の前にあるしなやかな指。

俺はその手を取り上げて綺麗に整えられた爪の先に痛いほどの視線を浴びせる。

「あ…」

一瞬でティファは悪戯を見咎められてしまった子供のような顔をした。

「あの…さっき、子供たちのついでに…つい、」

ぼしょぼしょと最後は消え入りそうな口調で、それだけで穴が開くというなら既に蜂の巣になっているであろう己の手先から目線を逸らした。

「……」

顔に出ない、という特技もたまにはいいものだと自賛する。

真新しい切り口の残る薄い爪からはもう意識は削がれ、いたたまれなく俯いているティファの小さな口元に魅入っていることがバレないからだ。

逆流する体中の血液。

だが、まだなのだ。

腕を伸ばしてサイドボードに用意してあった爪切りを取り上げる。

「じゃあ、足だ」

その言葉にえ、と顔を上げたティファをにこやかに見つめた。

「あ、足はいいわ」

口角を引き吊り気味に持ち上げた彼女は真っ赤になって解放された手で僅かに後退さる。

聞く耳など端っから持ち合わせていない俺は ほら、と丈の長いパジャマの裾からすらりと伸びる脚に手を掛けた。

「い、いいってば!」

不意に手にしていた爪切りを奪われた。

既に楽しみの一つを奪われていた俺は耳まで朱に染めてそれを両手で握り締めるティファをじとりと見遣る。

ぷいとそっぽを向く瞬間を見計らって掴んだ足首をひょいと持ち上げるとバランスを崩した彼女が小さな声と共にころんと後ろにひっくり返った。

「わ、…まっ、てクラ…」

口付ける。

足の甲、くるぶしから向こう脛。

「わかったわ、わかりました…っ」

膝の裏まで指を這わせるとくすぐったそうに身を捩るティファが観念した。



ぱちん

想像以上に薄いティファの足の爪をゆっくりと切り離していく。

「あ」

寝台から降り、傅(かしず)く俺を片目を細めて恥ずかしそうに見下ろすティファが口を開いた。

「深過ぎる…」

刃をわざと奥まで差し込んでいた俺はその声でごくりと音を立てそうになる喉に気を置きながら爪切りにかけていた力を少し緩める。

「…ここか?」

上擦る声を悟られないように顎を引いて爪に集中する振りをした。

「ん…も少し、浅く」

その爪ごと喰ってしまいたい。


目線を上げれば居心地悪そうに時折僅かに動く足の付け根がパジャマの裾からちらちらとのぞく。

絶景とか本音を口走ればこのしなやかな脚に蹴り飛ばされるのがオチだろう。沈黙は金、だ。


神聖ですらある滑らかにすらりと伸びたそれに添えた手が歓喜に沸いている。

…別に『足フェチ』とかいう俗なものなんかじゃない。

そんな言葉で片付けられるレベルではないのだ。


相変わらず深めに当てた爪切りの刃に、また太腿がぴくりと引き攣った。

「あん…また、奥に当たってるよクラウド…」



もう少し、遊んでいようと思ったんだけどな。

はは。






ティファの熱い吐息を間近に吸い込みながら横目で床に転がった爪切りを見遣る。


零れて散らばった彼女のかけらさえも愛しいと言ったら、

どんな顔をするだろう。




薄く小さな真昼の三日月が床で笑っている。





FIN


変態クラウド(えぇ)
さあ、引いた方せぇので手を挙げて!!
彼は「髪フェチ」でも「手フェチ」でも「足フェチ」でもありません。
「ティファフェチ」です。(え?知ってた?)

50000HITを踏み抜いてくださったziruさんのリクエストで
「ティファの足の爪を切るクラウド」でした。
「しっとり微エロな雰囲気で…生ツバごっくんエロクラの爪切り♪」ということで、
いろいろシチュエーション妄想してたらどんどんヤツが異常に…。いや、こういう人ですこの人(大好きv)
表で…大丈夫ですよねvきっと、…多分。

ziruさん、キリ番フミフミと嬉し恥ずかしリクエスト、ありがとうございました〜vv
受け取ってくださいまし!!(押し付けて逃走)


戻る